2008年11月05日

島桑の和針箱/pick up our works

「吉蔵」の島桑指物家具の中で、和針箱は今でも人気があります。
江戸指物の定番であります。
そして、指物家具の技術で基本となるのが和針箱の製作です。

島桑の和針箱/pick up our works

30数cm四方の四角の箱の中に、やらなければならない仕事がどっさり含まれています。
静岡の職人さんは針箱が得意でした。
だから、静岡には高い指物技術があるのです。

島桑の和針箱/pick up our works

まず、抽斗(ひきだし)。
5つの抽斗の大きさが全部違います。
そして、島桑のような高級材を使う場合、
前板を島桑の薄板で囲む(ひもといいます)仕事が普通です。

島桑の和針箱/pick up our works

天板は三味丁番で中折れ(真ん中で分かれる)方式になっています。
その中に、和裁縫に必要な、糸巻き(3枚)、針山箱、くけ棒(布を挟む金具を付ける)
を納めたカケゴ。
そしてカケゴの奥に隠し箱が挿入されます。
それら多くのパーツを職人さんが一人で全部作ります。

引き手金具もオーダーの一文字型。丁双(丁番)も三味線のデザイン。(今は廃盤)
東京の和物金具屋さんに古い型を起こしてもらいました


我が家でも、母の婚礼品として祖父吉蔵が製作した島桑の針箱があります。
「桑は化ける」といいますが、当初の山吹色がやがて渋い鼈甲色になっていました。

和裁をする人が少なくなった今日、和針箱は過去のもののような気がしていました。
弊社でも3年くらい在庫がありませんでしたが、
最近、問い合わせが3件あり、製作することになりました。

その一つがイギリスの教授、B氏のところに行きます。
通常、カケゴ、隠し箱など、部品は桐製なのですが、
島桑を特別寵愛されている方なので、すべて島桑材としました。
amazonの中古市場で見つけた、
貴重な絶版本「江戸指物」と一緒に、送る日を待っています。

島桑指物 尺二和針箱
 サイズ  間口36cm・奥行き22cm・高さ29cm
 材質 島桑材・桐材(抽斗内部)
 参考価格  ¥100,000(税別)


タグ :島桑

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Posted by kittsan at 09:18│Comments(9)家具の事
この記事へのコメント
木目、メラメラしてて根周りの感じが出てますね〜。
木取りも、前板を一枚で取ってあるんですね。
うちの桑様も、そろそろ一枚くらい磨いてほしいんですけど、ダンナがなかなかやってくれないんですよね。
薄く曵いてあるのは結構乾いてるから、雰囲気だけでも見てみたいんですが。
Posted by フォレストビュー/いちかわ at 2008年11月05日 10:05
別冊太陽「和家具」のなかで、島根県立美術館の館長、藤間家19代藤間亨氏は
「桑は妖艶に化ける。新作は五年後の姿を想像して求めます。
日本人が桑を見つけたことは大変なことですよ。欅なんて問題にならない。」と言っています。
でも、このように神格化された島桑材が一般に知れるようになったのは、
キハダ材に前面だけ島桑を使った(前桑)和茶棚や、島桑の単板を張った桐ダンス、
あるいはこの針箱のように木目の良い所を突板にした和家具が出回るようになったからのようです。
私もオール島桑材で製作した家具は本や美術館でしか見たことがありません。
多分、島桑という高貴な材は、家具よりも、たとえば厨子とか琵琶に相応しいのかもしれませんね。
Posted by kittsankittsan at 2008年11月05日 22:48
素晴らしい針箱ですね。私もほしい。でも私のほしいのは、やぐらの立っているやつなのですよね。どこかにないものでしょうか。
Posted by sikibu at 2009年02月05日 22:05
shikubuさん、コメントありがとうございます。
ご希望のスタイルの針箱、静岡でも作っていたと思います。
ただ、現在はどうでしょうか。
我が工房では、こういう中折の針箱のみの製作でした。
ただ、写真では不鮮明ですが、やぐらと同じ役割をする、
くけ棒を立てるように設定してあります。
(左側の写真の右下をよく見て下さい。)
shikubuさんの仰っているタイプも古典的でいいですね。
もし、見つかったらお知らせします。
Posted by kittsankittsan at 2009年02月06日 09:18
さっそくご丁寧にお答え下さりありがとうございます。2004年ごろにソニーショップ(Zekoo)で見かけたのですが、少しデザインが凝りすぎているような気がして購入を見送りました。今となっては後悔しているのですが、こればかりは縁がなかったとしか言いようがありません。御同業の方のお名前を申し上げるのは貴方様に対して失礼かもしれませんが、制作者は鈴木康弘さんという駿河寄木細工の職人さんでした。
あの形の針箱、使いやすいんですよね。ずっと愛用していたのが十数年前の強烈な地震の時壊れてしまいまして。それ以後探している次第です。
Posted by sikibu at 2009年02月07日 15:50
御歳80過ぎの母親が、

将来、人にもらってもらえるような針箱が欲しいとのこと。

さがしてたどり着いたのが、納得の逸品。

欅・楢・桜等の拭きうるし仕様の家具を求めるものの、

島桑はねー、手が届かないと思っていただけに

チャンス到来です。予約を願います。
Posted by 高林 順 at 2009年10月24日 12:10
高林様、コメントありがとうございました。

早々のご来社、そしてご購入、重ねて御礼申し上げます。
また、ご夫婦で楽しくお話しさせていただきました。
この度はありがとうございました。

お母様におきましては、島桑の和針箱をお気に召して頂けましたでしょうか。
静岡にお出かけの際は、またお立ち寄り下さい。
民芸のお話しなど、聞かせて頂けたら幸いです。

今後とも、よろしくお願い申し上げます。
Posted by kittsan at 2009年10月26日 00:13
母の喜んだ顔見せたかったです。

そして鏡台が修理できるとの話にとても期待していますので、

よろしくお願いします。

ちかぢかお世話になります。
Posted by 高林 順 at 2009年10月27日 09:54
高林 順さま。

お母様に気に入っていただいて何よりです。

御依頼のありました、島桑座鏡台の修理の件、
いつでも承りますので、ご都合のいい時、
ご来社くださいませ。

ご使用なさっている座鏡台を拝見することも楽しみです。
よろしくお願いします。
Posted by kittsankittsan at 2009年10月29日 02:30
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