2009年02月09日

いやらしい(言い回しの)本

毎月1回、日曜日の朝日新聞第一面にこの本の広告があります。
何年も同じ、全く変わらない広告です。

いやらしい(言い回しの)本

神崎隆洋著「いい家は無垢の木と漆喰で建てる」(ダイヤモンド社)

これもまた、いやらしいほど、読者の関心の壺を心得たタイトルです。

もう第19版に増版を重ねているから、人気の本なんでしょう。
私も妙に惹かれるものがあって、読んでみました。

いやらしい(言い回しの)本

建築会社の社長さんが書いた本です。
要するに、
本物の家を建てたいなら、家の中は全て無垢の木を使いなさい。
壁は漆喰にしなさい。
木造在来工法こそ最高の建築技術。
ということを、延々と述べています。

その他の物はすべてだめ!と断定してます。
合板、クロスはもちろん、集成材もニセモノだと決めつけています。
構造も木造在来工以外を批判しています。

私も、木や漆喰を使った日本建築はいいと思う。
けれども、無垢の状態でなく、木材を加工した製品にもそれなりの存在理由はある。
石油化学繊維で出来た製品にも利点はある。
反対に、無垢材の持つ欠点、自然素材の不完全性もある。

そういうこと全てを読者に紹介してこそ、信頼を得るのではないだろうか。
それに、材料だけでなく、機能性、デザインについても語って欲しい。
バランスの取れた、多面的な物の見方が、家作りには必要とされるのではないだろうか。

読者にとって、ただ響きのいいタイトルだけでは、結局混乱を招くことになると思う。
実際、Amazonのブックレビューを見ても、そういう批判の多い本でした。


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Posted by kittsan at 09:01│Comments(4)本の事
この記事へのコメント
出ましたね。いやらしいシリーズ!(笑)
私も、このタイトルになびいてしまう派です。ぐふふ
図書館にあったら、私も読んでみよう。

どちらにしろ、メリットデメリットの紹介は必須ですよね。
良さだけ聞かされた施主さんが、
「こんなはずではなかった・・・」って落ち込みますもん。わはは

>多面的な物の見方
私もいつも忘れずに、柔らか頭でいたいと思っておりまする。
Posted by ゆいまーるゆいまーる at 2009年02月09日 09:59
もう、おわかりでしょう?
いやらしシリーズはカモフ○○○なんです。
物事には「good,better,best」がある、ということを言いたかったのですが、
この社長さんのようにbestだけを求める人も嫌いではありません。
(読んでみるとわかります。)
私にはそれだけの根性がないだけで・・・。
物に取り付かれたような人が世界を切り開くのですよね。
(う〜ん。違うかなあ?)
Posted by kittsankittsan at 2009年02月09日 17:31
私の意見。
この本書いた方が建築会社の社長さんということは、本と新聞を媒体に利用したセールスプロモーションかしら?
だって、無垢と漆喰で家を建てればその分お金取れるもん。
「本を出すくらいすごい人」が「家は無垢と漆喰しかダメ」って言ってる。
「一体どこの会社かしら?」「ウチもここにお願いしたいわ」
な〜んて、新興宗教みたいにお客が来るとか?
この本を読んだ大勢の人が「無垢と漆喰の家」を何件も注文したら、「うっかり信じる人向け」へのアプローチにはこの手法が有効ということ。
本の内容より、その結果が知りたいデス。
Posted by フォレストビュー/いちかわ at 2009年02月09日 18:15
コメント欄が論壇のようになってきましたね。
いいことです。(笑)

全く同じ体裁の広告が何年も続くのは、
このタイトルが広告として一番効果があると出版社は判断したんでしょう。
事実、こんな偏った本が2002年の初版以降、19版を重ねているのだから。
私も当初、「細○○子の××術」とか「血液型性格判断」とかのような、
素人だましの本だと思っていました。

脱サラし、独学で一級建築士の資格を取り、会社を興したこの社長さん。
自分の家を実験室にして、他の物には目もくれず、
徹底的に無垢と漆喰にこだわってるようです。
その姿勢はある種の感動を呼ぶのでしょうね。
実際、注文は増えたようですが、メンテナンス費用など、課題は多いようです。

家は何十年も経たないと統計的な結果は出ないでしょうから、
彼のことを信じて建てた家がどうなのか、まだまだ先の話でしょうね。
Posted by kittsan at 2009年02月09日 23:46
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