2011年01月17日

自己愛に満ちた男の一日/映画「シングルマン」

正月休みに1本は映画を見よう。
今年20本以上の映画を見ることを目標に、捜した映画がこれ。
「シングルマン」は、独特の雰囲気を持った、作家の自己愛の物語でした。

自己愛に満ちた男の一日/映画「シングルマン」

その日は大学教授ジョージにとって特別の一日だった。
16年間共に暮らしたパートナーが、交通事故で亡くなってから8ヶ月。
「愛する者がいない人生に意味はあるのか?」
日に日に深くなる悲しみを自らの手で終わらせようと決意したのだ。


グッチやサンローランのディレクターの経歴を持ち、
現代のカリスマファッションデザイナーとして有名なトム・フォードの作品。

だから、映像の美しいこと。
主人公の心情を表すグレートーンが基調になっていて、
時々心が動かされる場面で僅かに色が差す、なんて凝った作りになっている。

ミース建築の象徴のようなガラズ張りの彼の家。
トラディショナルな60年代の魅力的なファッションの数々。
クラシックカーはもちろん、大学の自動販売機までオシャレなこの時代の風景。
そして、彼の愛する男たちを、選び抜かれた美形俳優が演じている。
それらを眺めているだけでも、この映画を見る価値がありそうです。

人も物も、そういうスタイリッシュに描かれた映画なのです。
だから、深い人間洞察もなく、社会との関係にも触れていません。
幸せだった過去の自分を愛し続け、
生きる望みを無くした、今の自分を哀れんでいるのです。

美しい死に方を計画し、気配りされた遺書を残し、
机の上に、最上の死に支度を用意する。
ネクタイはウインザーノットに締めて欲しい、とか。
これはもう、究極の自己陶酔映画と言うことになるのでしょうね。

私も自己愛人間のはしくれなので、解らないわけでは無いのですが、
こうまで徹底して描かれると、やっぱり何か違和感がありますね。

美を追究する人間って、結局こういう風になってしまうのでしょうか。



同じカテゴリー(映画の事)の記事画像
今年(2017年)観た映画・・・少な~い
タイトルがカッコいい/日本映画「彼女の人生は間違いじゃない」&「夜空は最高密度の青色だ」
年寄りを NAMENNAYO !
わたしがサプライズした・今年の映画ベスト3
東西の宗教観が混在したようなホラー/日本映画「淵に立つ」
世の中はまずは自分の為にあり/映画「ブルックリン」
同じカテゴリー(映画の事)の記事
 今年(2017年)観た映画・・・少な~い (2017-12-28 17:12)
 タイトルがカッコいい/日本映画「彼女の人生は間違いじゃない」&「夜空は最高密度の青色だ」 (2017-09-13 19:01)
 年寄りを NAMENNAYO ! (2017-01-19 08:20)
 わたしがサプライズした・今年の映画ベスト3 (2016-12-29 20:01)
 東西の宗教観が混在したようなホラー/日本映画「淵に立つ」 (2016-11-18 09:21)
 世の中はまずは自分の為にあり/映画「ブルックリン」 (2016-08-30 20:25)

Posted by kittsan at 09:04│Comments(2)映画の事
この記事へのコメント
本年もよろしくお願いします。
私も4日に「シングルマン」を観てきました。
それにしてもセットと映像がきれいでしたね。
それだけでも満足でした。
kittsanさんが「シングルマン」の何に惹かれて観に行かれたのか、
そのあたりをぜひ聞いてみたい。

今年の1本目は、めずらしくkittsanさんと同じ映画。
これからの20本が、どんな映画になるか楽しみです。
Posted by unno at 2011年01月19日 23:20
Thanks unnoさん。

こういう傾向の映画は基本的には好きですね。
逆に女性に受けそうな映画は苦手。
たとえば、「マザーウォーター」とか。

「シングルマン」あまりに内向的過ぎるのでちょっと退いてしまう。
それに意外なラストも監督の手の内のような気がして。
unnoさんはいかがでしたか。

今年2本目は「ソーシャル・ネットワーク」になりそうです。
Posted by kittsan at 2011年01月21日 08:51
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。

削除
自己愛に満ちた男の一日/映画「シングルマン」
    コメント(2)