2011年03月07日

わたしたちの物語/映画「海炭市叙景」

夭折した小説家・佐藤泰志の短編集「海炭市叙景」のなかの5編を映画化したものです。
プロの俳優とオーディションで募集した、モデルとなっている函館市民が混在して、
淡々としたドキュメンタリーのような雰囲気を出しています。

地方に住む人たちの、何処にでもある話。
新聞に載るほどではないけれど、本人にとっては足を引きづるように鬱陶しい毎日。
そんな、わたしたちの物語がここには描かれています。

わたしたちの物語/映画「海炭市叙景」

ドックの閉鎖とともに解雇される兄妹。
初日の出を見に雪の山に登るが、下りのロープウェイの金がない。
歩いて下った兄が戻ってこない。6時間も待ち続ける妹。

土地開発のため立ち退きを迫られている老女。
彼女は最後の一軒になってもガンとして拒み続ける。
連れ添いは飼い猫のグレ。その猫が何処かへ行ってしまった。

プラネタリウムで働く中年男と水商売の妻。
息子は父と口をきかず、妻も仕事に行ったきり一晩帰ってこない。

ガス屋を継いだ若社長は新しい事業がうまくいかず、
再婚した妻に暴力を振るい、従業員にも当たり散らす。
家庭内暴力は、妻の義理の息子への虐待につながっていく。

海炭市の路面電車の運転手を務める父と、東京に出て行った息子。
仕事で帰省する息子は実家へ帰ろうとしない。
二人は二言三言会話を交わすだけで、息子は東京へ帰っていく。

わたしたちの物語/映画「海炭市叙景」

我々の人生は取るに足らないもの。
暮らしていく毎日が、苛立ちとあきらめの連続。
それでも、夢や希望のかけらを追い続けて生きていかなければならない。

それぞれの逸話があまりにやるせなくて、辛くなって仕方ありません。
でもそこから生まれる共感は、心の中に染み込んでいつまでも忘れることはありません。



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Posted by kittsan at 09:02│Comments(2)映画の事
この記事へのコメント
こんにちは。
「海炭市叙景」は、とても観たかったのに、とうとう行けませんでした。ビデオ化されたら、すぐに観ようと思います。
Posted by unno at 2011年03月07日 12:57
Thanks unnoさん。

こういう映画、もうどうしようもないですね。

「そんな陰気な映画を見られるのは、自分が幸せだからだよ。」
とよく言われます。

そうかなとも思いますが、やさしい気持になれることだけは間違いない。
共感する、シェアするとはそう言うことなのではないでしょうか。
Posted by kittsan at 2011年03月08日 08:21
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    コメント(2)