2013年07月26日

「羽衣」あっての、世界文化遺産・富士山

富士山が世界遺産となったことは光栄ですが、
自然遺産ではなく、文化遺産というところが複雑でした。

地元静岡市にある「三保の松原」も同様。
風景そのままより、そこから眺める富士山が文化的にどうなのか?
・・・って言うことなんですよね。

そんなことを思いながら、今「羽衣」の謡(うたい)をお稽古しています。
ごぞんじでしょうけれど、
能「羽衣」は、毎年ご当地三保の松原で薪能が行われるほど、有名です。
私も以前鑑賞したことがありますが、自分で謡うことは初めて。
ただ、難易度としては初級の中ぐらいなので、やっとその番が回ってきました。

「羽衣」あっての、世界文化遺産・富士山

 風早の 三保の浦曲を漕ぐ船の 浦人騒ぐ波路かな
 これは 三保の松原に 白龍と申す 漁夫にてそうろう♪
 ・・・・・・・・・・


ワキが登場し、三保の松原で衣を拾います。
次にシテの天人が登場し、こう言います。

 ・・・・・・・・・・ 
 のう その衣は此方のにてそうろう
 何に 召されそうろうぞ♪


返せ、返さぬの問答がありますが、
天女が舞いを舞うことで、漁夫は衣を返し、
最後に天女は天空に舞い上がって行きます。

春の美しい風景と華やかな音楽と舞い。
世阿弥の美意識が溢れる素晴らしい能です。

「羽衣」あっての、世界文化遺産・富士山

謡い進んでいく内にハッと気付きました。
この能こそがまさしく、富士山が文化遺産であることを表している。
・・・それは、この最後の部分です。

 ・・・・・・・・・・ 
 三保の松原 浮島が雲の
 愛鷹山や富士の高嶺
 かすかになりて 天つ御空の
 霞に紛れて 失せにけり♪


クライマックス。天女が天に昇っていく姿を
なんと、俯瞰した位置から描いたようなスペクタクル。
室町時代から受け継がれる、富士と三保の松原と羽衣伝説。
その、素晴らしい関係を見事に謡った、まさに文化遺産なのです。



同じカテゴリー(古典芸能の事)の記事画像
能「橋弁慶」の謡、弁慶役を少しだけ。
来年の正月休み明け「鶴亀」を謡いましょう。
り〜んりーんと友を呼ぶ。能「松虫」
ここまでやるか、創作文楽・不破留寿之大夫(東京→静岡ひとり旅)
扇を高く、緩急付けて・・・/謡い仕舞おさらい会
こんなひどい能公演みたことない!
同じカテゴリー(古典芸能の事)の記事
 能「橋弁慶」の謡、弁慶役を少しだけ。 (2015-08-26 08:55)
 来年の正月休み明け「鶴亀」を謡いましょう。 (2014-12-20 09:13)
 り〜んりーんと友を呼ぶ。能「松虫」 (2014-10-20 08:30)
 ここまでやるか、創作文楽・不破留寿之大夫(東京→静岡ひとり旅) (2014-09-16 08:10)
 扇を高く、緩急付けて・・・/謡い仕舞おさらい会 (2013-11-20 09:44)
 こんなひどい能公演みたことない! (2013-05-11 08:30)

この記事へのコメント
kittsan
 多くは語れません、只ゾクゾクッとしたとだけお伝えしたく(^^)
Posted by 山ちゃん at 2013年08月05日 12:18
山ちゃん、コメントありがとうございます。
能「羽衣」見ていただけでは超有名だ、
位にしか思えなかったけれど、
謡ってみると、スゴイです。
飛行機もない時代、天へ登っていく天女の視点で、
あの光景を想像するんですから。
種本があったとしても、世阿弥は天才です。
Posted by kittsankittsan at 2013年08月07日 07:51
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。

削除
「羽衣」あっての、世界文化遺産・富士山
    コメント(2)